【インドネシア大統領選挙】「第2ラウンド」に突入した両候補(第1回)

今年4月17日のインドネシア大統領選挙が迫っている。インドネシアでは大統領選挙は5年に一度、議会選挙と同時に行われている。

前回2014年の選挙は、ジョコ・ウィドド氏とプラボウォ・スビアント氏がまさに激闘を繰り広げた。当初は国民的人気を有するジョコ氏が圧倒的勝利を収めると見られていたが、プラボウォ氏率いるグリンドラ党が徐々に巻き返し、蓋を開けてみればジョコ氏の所属する闘争民主党は事前予想を下回る議席数に甘んじた。

そして5年後の今回、両候補は副大統領候補を代えながらも再び対峙している。

前回は辛勝だったジョコ氏

アメリカでは共和党と民主党が、イギリスでは保守党と労働党が国政議会をほぼ二分している。しかしインドネシアの場合、有力政党が複数存在するため「二大政党制」のような構図が成立するような状況ではない。

インドネシアの議会選挙では、ある1党が20%以上の得票率を得れば勝利と言われており、誰が大統領になった場合でも連立政権が樹立される。

前回の議会選挙では、ジョコ氏の所属する闘争民主党が歴史的勝利を収めるという観測もあった。一部では30%以上の得票率を獲得するという見方もあったほどだ。

しかし、それは楽観的過ぎる観測だった。2014年に入るとグリンドラ党が支持率を伸ばし、闘争民主党が得た得票率は20%にも満たなかった。

大統領選挙ではジョコ氏が勝利を収めたものの、その得票率は53%対47%。ジョコ氏にとっては辛勝というべき結果だった。

外資規制と現政権

今年2019年の大統領選挙において、ジョコ氏とプラボウォ氏の公約の違いはどこにあるのだろう。

一言で言えば、基本方針そのものに大きな差異はない。インドネシアの政治は保護主義の強い傾向があるが、プラボウォ氏はこの点では急進的で、保守的とも言える。

ジョコ氏の現政権下において一部の外資規制の緩和が行われており、ジョコ氏の政策は、外資に対してより親和的と表現できるだろう。外資規制を業種毎に規定しているネガティブリストの一部緩和が2016年に行われた。2018年11月にネガティブリストの改定を再度行う方針が発表されたが、産業界からの反対により延期となり、一筋縄ではいかないところがある。

争点のひとつ「農業問題」

インドネシアでは農林水産業がGDPの約15%、労働人口の約4割を占めると言われており、農業に関する政策は、大統領選挙でも大きな争点になる。

たとえば、2月14日に中部ジャワ州グロボガンでの政治集会で、プラボウォ氏はこう発言した。「アメリカ、オーストラリア、ベトナム、そして日本では政府が農家に対する保護政策を打ち出している」

農家の貧困はインドネシアにとっての大きな社会問題のひとつであるが、上の発言と同時にプラボウォ氏は、「一次生産者にとって有害な食料輸入を阻止する」とも語っている。つまり、外国からの輸入を減らして自国の食料自給率を上げるということだが、プラボウォ陣営はこの問題について「Hentikan(止める)」という単語をはっきりと使用している。輸入を止める、ということだ。段階を踏まえない物言いは、急進志向のプラボウォ氏ならではとも言える。

全国を視察するジョコ氏

ジョコ氏は地方農村部への視察の機会を増やし、一次生産者が作物を売る際の値段についても言及している。

あるトウモロコシ農家は、1kgあたりのトウモロコシの出荷価格が3500ルピア(約27.6円)であることをジョコ氏に打ち明けた。だがジョコ氏は、トウモロコシの出荷価格が1kg6000ルピア(約47.3円)であることを新聞で読んでいた。この価格差にあたる4割分は仲介業者の手元に入っていると思われる。

これは仲買人の問題も絡んでおり、根が深い。こうした諸々の農業の課題解決に対して、ジョコ氏は技術革新の活用を突破口の1つと考えているようだ。2010年代はインドネシアでスマートフォンを中心に技術革新が進んだ。数多くのスタートアップが誕生し、そして4社がユニコーン企業(企業評価額10億ドル超の未上場企業)にまで成長した。

一方でプラボウォ氏はこれとは角度の異なる見解を持っているようだ。

プラボウォ陣営が公約している農業関連の大型プロジェクトに関しては、「一次生産者専用銀行」が挙げられる。これは農業と漁業に従事する人々への融資を目的にした金融機関だという。こうした金融機関を、全国の農村部に設置するとプラボウォ氏は発言している。

インドネシア大統領選挙については、何回かの連載で注目すべき点を配信していく。

次回は「インドネシア発のユニコーン企業」を巡る、両者の見解について解説する予定だ。

【参考・動画】
Jokowi: Petani Perlu Dikenalkan Marketplace-YouTube