シャープがインドネシアでスマホ市場に繰り出した「一手」

シャープは台湾鴻海精密工業による買収前から、ASEAN地域で一定の存在感を発揮していた。とくに白物家電分野では、大手家電販売店の中でも決して小さくない面積を専有し続けた。「売れていない」というわけではなかったようだ。

そんなシャープがインドネシアで「新しい攻勢」を仕掛けるようになった。

RAM3GBのローエンド機種発売

この度シャープが発表した新型スマートフォン『R1』は、5.2インチの画面を持つ機種である。一昔前なら「ファブレット」と呼ばれていた大きさだが、インドネシアでもスマホの大型化という潮流は変わらない。

このR1の特徴は、「頻繁な動画視聴を想定している」ということだ。インドネシアのユーザーは、スマホで動画を観ることがとくに多いという。そのためディスプレイはシャープの技術を導入している。安っぽいプラスチック製ディスプレイでは決してない。

メインカメラは1300万画素、セルフィー用フロントカメラは800万画素。OSはAndroid7.0である。ちなみにメインカメラの下部にある窪みは、指紋認証パッドだ。

RAMは3GB用意されている。一方でROMは32GBまで。microSDカードを使えば、ROMは2倍に拡張できる。電池容量は4000mAh。

では、気になる値段は?

179万9000ルピア(約1万5000円)である。

課題のTKDNはクリア

1万円台のスマホとは、当然ながらローエンドモデルである。筆者の実感から判断しても、インドネシアで最も普及しているのはこの価格帯の機種だ。

R1のベンチマークは不明だが、同一SoC(MediaTek MT6737 1.25GHz)を導入した別機種の数値がある。iPhone 5に使われているApple A6を若干下回るレベルだ。やはりこのあたりは値段相応で、3Dゲームなどでは大きなラグを起こす可能性がある。

ただし先述の通り、問題は動画視聴である。映像を高クオリティーかつストレスなく観るためのローエンドモデル機としては、R1は最高峰のスペックを誇ると断言してもいいだろう。

ちなみに、この製品のインドネシア国内調達率(TKDN)は31%。法律で義務付けられている30%はクリアしている。組み立て工場の所在地はインドネシア領バタム島だ。この国におけるスマホ新製品情報をチェックする時、性能諸元とともにTKDNをチェックする作業は欠かせない。これを満たさなかった場合、新型iPhoneですらも正規代理店での販売が禁止されるのだ。

日尼両国の差異

シャープがこのような製品を新興国に送り出すという事実は、やはり大きな意味合いを含んでいる。

日本とインドネシアとでは、携帯電話の進化の歴史に大きな隔たりがある。日本の場合はハンドバッグにも入らなかった巨大な受話器を、いかに小型かつ多機能化させるかという工程からその歴史が始まった。1990年代にジャイアント馬場の掌に収まる携帯電話の広告は話題を呼んだし、その後の折りたたみ式形状を経てカメラ搭載機種などはセンセーショナルを巻き起こした。2000年代の日本の携帯電話市場を牽引したのは、女子高生だった。

しかしインドネシアには、そうした歴史がまったくなく、いきなりスマートフォンが普及した。道程の違いは考え方の違いでもある。日本製の機種をそのままインドネシアに持ってきても普及しづらいということは、むしろ当然だ。

鴻海傘下の新しいシャープは、今後インドネシアでどのような道を歩んでいくのか注目が集まる。

【参考・動画】
Unboxing SHARP R1 - Pertama di Indonesia-YouTube