ジャカルタ州知事は「世界一のIoT都市」を夢見た


※画像はYouTubeのスクリーンショット

IoT社会、すなわち全ての事柄がインターネットに接続されている環境の実現には、執政者の協力が欠かせない。

筆者は旧Walkersインドネシアから今のこのメディアに移籍する際、あるひとつのことをやってみようと考えた。それは最先端テクノロジーについての記事を増やすということだ。

筆者は現在、FUTURUSやガジェット通信、@DIMEといったテクノロジー関連メディアで執筆を請け負っている。それらで仕事をしていく中で感じるのは、GDPで世界3位の日本はIoTに関しては、国際競争の中で出遅れているのではないかということだ。

『Indiegogo』や『Kickstarter』といった国際的クラウドファンディングサービスを見ても、日本からの製品出展は決して多くない。むしろ中国や香港、シンガポールのほうがいろいろなものを開発しているくらいだ。

都市計画とビックデータ

IoTを「モノのインターネット」と訳すのは、だいぶ語弊があると筆者は考えている。

より正確に言うなら「物事・現象のインターネット接続」である。カタカナで「モノ」と書くと「工業製品」に限定されてしまうが、IoTとはすべての「動作」がインターネットを介して受信者に届けられるものと解釈するべきだ。

「モノ」は「動作」を読み取るための付属品に過ぎない。

AmazonもGoogleもAppleもMicrosoftも、製品ではなくサービスに主眼を置いている。

そうした視点で見ると、インドネシアでは日本以上にIoTが進展していると思える事象も発生している。インドネシアのIoTサービスといえば、何をおいても『Go-Jek』だ。ビッグデータを活かした効率的なバイクタクシー配車サービスを提供し、たちまちのうちに都市部で急速に普及した。ジャカルタ中心部の道路は今やGo-Jekのバイクばかりだ。

クラウドに蓄積されたデータは嘘をつかない。Go-Jekはデータを活用して極めて合理的な経営戦略を即座に組み立てることができる。だが、人間という動物はテクノロジーに対して決して従順ではないという側面もある。

利権とIoT

Go-Jekの台頭は、それまでIoTに何ら興味を示さなかった既存運送業者を脅威にさらした。

インドネシアのタクシーは、今もカーナビが搭載されていないのが普通だ。だから運転手の技量と知識量がサービスの快適性を左右してきた。ところが、ビッグデータを駆使するGo-Jekはライダーの技量に関わりなくほぼ均質のサービスを提供している。スマートフォンで位置情報を共有しているのだから、「◯◯ホテルってどこにあるか知らない」ということは起こらない。

それこそがIoT導入の最大の利点なのだが。

ジャカルタ中心部で既存運送業者による大規模デモが発生し、Go-Jekのライダーに危険が及ぶということもあった。

だが、Go-Jekが淘汰されるということはなかった。それは結局、現地の州政府が配車サービス事業者を必要としたからである。

テクノロジージャーナリストの視点から見て、ジャカルタのバスキ・プルナマ州知事は善政を敷いた人物である。バスキ氏が常々公言していた「スマートシティ構想」は、ジャカルタのIoT化に他ならない。IT企業の保有するビッグデータを活用して都市の再開発を実行しようとしたのだ。2010年代において、この取り組みは先進的と評価してもいいだろう。

一都市のIoT化を進める中で、それまで利権にありついてきた特定の勢力とぶつかるのは必定だ。

時計の針は戻せない


※画像はYouTubeのスクリーンショット

バスキ氏の収監は、新興国のIoT開発に大きなヒビを入れてしまう可能性がある。

とはいっても、誰も過去に戻ることはできない。もし次期ジャカルタ州知事がバスキ氏を本気で凌駕したいと考えるなら、ビッグデータを優先した科学的な都市づくりは必須であろう。バスキ氏が先鞭をつけた以上、それを放棄するということはジャカルタの後退を意味することになる。

スマートシティの構築は、それを強く促す執政者があってこそなのだ。