宗教侮辱罪の判決を受けた州知事が敷いた「未来の道」


※画像はYouTubeのスクリーンショット

筆者は、MMAファイターのマックス・メティーノに格闘技を教わっている。

メティーノ選手はインドネシア国内に『Warrior』という団体を展開している。筆者はジャカルタ滞在中は、必ずクレコット地区にある道場へ顔を出している。高校生の頃に桜庭和志に憧れて組技系格闘技を始めた筆者にとって、メティーノ選手は人生初めての外国人の師匠だ。

そんなメティーノ選手から見て母方の従兄にあたる人物に、バスキ・プルナマ(通称アホック)氏がいる。言わずもがな、ジャカルタ州知事だ。決して同姓同名の別人ではない。

先ごろ行われた州知事選挙では、票が伸びず敗北してしまった。だがバスキ氏は良くも悪くも印象に残る政治家である。歯に衣着せぬ発言は時に「大失言」となることもあったが、それがまた人気を呼んだ。

そんなバスキ氏の州知事としての最大の功績は、何だろうか?

メティーノ選手は、「アホックのおかげで洪水被害がだいぶ緩和された」と応援集会で発言したことがある。だがアスリートとして我が師匠が感じているのは、恐らくカリジョド地区の件ではないか。

カリジョド地区は、一部の日本人の間でも名が知られていた。
ここはいわゆる置屋街だったからだ。
売春を目的とする地区には、大きく分けて二通りある。外国人向けか現地人向けか、という点だ。カリジョドは後者で、法の支配が行き届いていないため、危険性が大きい。

バスキ氏は、カリジョド地区の再開発に踏み切った。言い換えると、置屋街を撤去するということだ。

そして再開発後はスケートパークにすると公言したのである。

このチョイスも並の政治家にはなかなかできるものではないが、ジャカルタは2018年のアジア競技大会を控えている。日本もそうだが、こういう大きなスポーツイベントを目前にすると各地で競技場の整備が促進される。だが、ジャカルタで最も危険な場所の1つとも言われていた地区を本当に競技場などに変えられるのか?

結論を言えば、カリジョドは大きく変わった。

この動画のスケートパークは、かつての置屋街である。急激な変貌ぶりに、ジャカルタ市民は驚愕した。この影響で「カリジョド・ラマ」と「カリジョド・バル」という単語が登場したほどだ。「ラマ(lama)」は「古い」、「バル(baru)」は新しいという意味である。

アジア競技大会では、カリジョドをBMX競技の開催地にしようという構想もある。すでに休日は大勢のスケーターが詰めかけている状況で、その中には親子連れの姿も見られる。

ジャカルタ州知事バスキ・プルナマの最大の「遺産」は、このカリジョド地区であることに間違いはない。

カリジョドでは、無料駐車場の試験運用も始まっている。

現地市民ですらも避けるほど治安の悪い地区を、いかに再生するか。先ごろ、宗教侮辱罪で2年の懲役を言い渡されたバスキ氏だが、都市計画の手法については確かに「未来の道」を敷いた。

後任の州知事は、この道をどう歩んでいくのだろうか。それとも――。