テロ安全策

テロの犠牲にならないために 「いざという時の対処法」を考える

外務省が『ゴルゴ13』とのタイアップ企画を行っていることが話題になっている。

これは、とくに中小企業や個人旅行者に向けて「海外での安全確保」をゴルゴが指南するという内容だ。日本は戦後、オウム真理教による化学テロ事件は別として「いつどこで爆発テロが発生するか分からない」という状況に遭遇したことがなかった。それは喜ばしいことではあるが、故にテロ対策を学ぶ機会がなかったのも事実だ。

テロリストは、案外身近にいるかもしれない。インドネシアも例外ではなく、この国に進出した企業は「いざという時の対処法」を身につけるべきである。

爆弾テロの恐怖

2016年1月14日。ジャカルタ中心部でテロ事件が発生した。

タムリン通りで複数人の男が銃撃と自爆攻撃を行い、何の罪もない一般人を巻き込んだのだ。

筆者の下宿は、現場近くにある。徒歩で10分強の距離だ。友人の一報を受け、筆者は一眼レフカメラを持って飛び出した。本当ならば現場を離れなければいけないが、生憎と筆者は報道記事を書くことで食べている。

テロ発生現場は、戦場と同義である。実行犯の焦げた死体から上がる煙、自動小銃を抱えて走る陸軍兵士、隠されていた小型爆弾の炸裂音。いつもの平和なジャカルタは、もう存在しない。ここはすでに戦場なのだ。

筆者はこの日の夜、知り合いの日系企業幹部と約束をしていた。その人は有名な柔術家で、地元MMAファイターのフランシーノ・ティルタのジムへ出稽古に行く予定だったのだ。筆者は落下傘徽章を胸につけた兵士の横で、約束相手にメッセージを送った。その人の安否確認もそうだが、それ以上に「安全な屋内へ退避するように」ということを伝えたかったのだ。

都市部でのテロは、「その都市全体が標的にされている」ということを表している。タムリン通り沿い、サリナ周辺の地域は外国人ビジネスマンが多くいる場所だが、テロリスト自身が想定している攻撃目標は1ヶ所だけではないはずだ。この時の筆者が恐れたのは、次はブロックMやスナヤンが攻撃されるかもしれないということだった。

そうならなかったのは、あくまで「結果」である。そして我々外国人は、テロリストにとっては絶好の標的であることを忘れてはいけない。

日本人は「攻撃目標」

ジャカルタでのテロ事件から半年後、バングラデシュの首都ダッカで悲劇が起こった。

イスラム過激派のテロリストが飲食店を襲撃し、日本人7人を含む22人が殺害されたのだ。

この事件は、親日国と言われていたバングラデシュで発生したということと、テロリストにとって外国人は皆一様に攻撃目標であるということを日本人に知らしめた。そういう意味で、図式としてはジャカルタでの一件と差異はない。

その国の親日度と、テロ発生の可能性は決して連動することはない。そして日本は、半世紀以上に渡ってアメリカと軍事同盟を結んでいる。過激派から見れば、日本は「アメリカに与している国」ということになるのだ。

「ハロー」と「ピース」という単語を言えば誰とでも友達になれると考える者は、もはや平和な日本国内にも滅多にいない。外務省から退避勧告が出ている国に自ら入る行為は、テロリストに対して「自分を人質にしてくれ」と言っているに等しい。

また、退避勧告がなくとも外務省が配信する安全情報は常にチェックするべきである。外務省のメール配信サービス『たびレジ』は、ジャカルタやスラバヤといったインドネシア都市部の労組デモ情報なども知らせてくれる便利なシステムだ。登録しておいて損はないだろう。

不審物には触らない


※画像は外務省海外安全ホームページのスクリーンショット

身近な地域でテロが発生したら、まずは「極力その場を離れること」と「屋内への退避」である。これは繰り返し書いておきたい。

またその上で、「怪しいものには触れない」ということも頭に入れておくべきだろう。

テロ現場には、必ずトラップが仕掛けられていると判断して間違いはない。攻撃予定地域の周囲をブービートラップで囲むのは、戦術の常識である。ベトナム戦争の時のアメリカ軍は、ジャングルに配置された様々な罠に苦しめられた。すなわち現代のテロリストは、50年前の北ベトナム軍と同じことを市街地で行っているのだ。

ASEAN諸国の中でも良好な治安状況を保つジャカルタが、一瞬で戦場と化す。それがテロリズムだ。悪魔の爆炎に呑み込まれるか、はたまたそこから難を逃れるか、それは日頃の意識と情報収集の頻度で決まる。

外務省海外安全ホームページ

たびレジ