「フィンテック戦争」がついに始まった

「フィンテック」という単語を簡単に訳すなら、「電子金融」と言うべきだろうか。

スマホをかざして会計を済ます行為も、フィンテックのひとつである。当然だが、市民の誰しもがキャッシュレス決済できれば商取引も効率化する。そして効率化された分、新しいビジネスが発生する余地も生まれるということだ。

インドネシアにおけるこの分野の成長が、去年末頃から著しい。

物事の流れが効率化

2015年の中頃から、インドネシアではローエンドクラスのスマートフォンが普及し始めた。

100ドル程度で購入できる製品の新発売が急増したことで、この国の電子商取引は躍進的進化を遂げるようになる。インドネシアはそもそもの人口が多く、その割にあらゆる窓口の効率化が進んでいなかったから市民は「並ぶこと」を余儀なくされていた。

長距離列車の切符を買うにも、まずは窓口前に列を作る。たまに割り込んでくる輩と戦いながら、文字通りチケットを勝ち取る。そんな一苦労を覚悟しなければ、ジャワ島内を移動することもできない。

それがスマホを使った電子商取引の確立で、すべての物事がスムーズに流れるようになった。それだけでなく、チケットの電子化は前々から問題視されていたダフ屋を駆逐してくれた。市民にとっても政治家にとっても地方自治体にとっても、スマホほどありがたいものはない。

電子決済戦争


※画像はGo-Jekアプリのスクリーンショット

日本人駐在員の間でも大きな話題になった配車サービス『Go-Jek』は、すでに独自のキャッシュレス決済導入を進めている。

インドネシアのオンデマンド配車アプリGo-Jekが、シンプルなeウォレットを導入したのは少し前のことだ。(中略)同スタートアップは最近、ユーザ間で相互にGo-Payクレジットを無料送金できる新機能を導入したGo-Jekはこの機能により、ユーザ間で相互処理が可能な非常に強力なペイメントソリューションへと大きく前進することになる。(The Bridgeの記事より)

もちろんこれはGo-Jekだけではなく、マレーシア資本の『Grab』もインドネシアでフィンテック事業の開発に乗り出している。目指すところは「小銭からの解放」だ。小銭がない、という悩みはインドネシアではつきものである。

そしてこれは同時に、東南アジアの新興国が経済先進国であるはずの日本以上に「IoT社会」を目指しているという証拠でもある。

そして案の定、大国からも「黒船」が次々に来航している。日本でもお馴染みのLINEもそうだが、それ以上に阿里巴巴グループの進出が大きいだろう。この企業は、アジア地域においてAmazonと競合している。インドネシアへも「現地企業に対する投資」という形で進出を本格化させている。

外資系IT企業の進出は租税徴収の面で大きな壁が存在するものの、インドネシアが「フィンテック戦争」の舞台になる日は確実に近づいている。

スマートテクノロジーに注目

IoTに関する日本人の意識は、「スマホと家電製品がつながる」という程度にまだ留まっている。

だが、IoTは「あらゆるモノがインターネットに接続される」ということだから、何も家電製品だけがその対象ではない。その点からしても、インドネシア都市部の市民は日本人以上にIoTを理解している。

日本の経済成長期は60年代。当時のテレビ番組で常時30%台の視聴率を取っていたのは、プロ野球とプロレスだった。大人も子供も長嶋茂雄とジャイアント馬場の活躍に歓声を送り、毎日夜8時には必ずテレビの前に座っていた。

その時に必ず目にするのが、家電製品のCMである。とくにプロレス中継は三菱電機がスポンサーだ。冷蔵庫や洗濯機といった大型家電を宣伝するのに、雄大な肉体を持つジャイアント馬場は絶好の広告塔だった。

つまり、日本の発展は「家電製品の購入」が前提だったのだ。だがインドネシアは違う。この国の経済発展はまさに今起こっているのであり、人々が視聴するのはYouTubeのピューディパイのゲーム実況動画だ。その際に目のあたりにするのは、Googleが配信した広告である。

インドネシアの発展は「インターネットの普及」が前提だ。まずはそれを理解しなければ、話は進まない。

今後は読者の皆様に、インドネシアの生活情報やトレンドなどと併せて「インドネシアのスマートテクノロジー」を紹介したいと考えている。その際、澤田真一名義の記事の書き方は旧Walkersインドネシアとは変わり、常体でやらせていただきたい。理由は、常体のほうが表現の幅が格段と広がるからだ。敬体ではいわゆる「話し言葉」に近くなり、文章に含みを持たせられないということもある。

今後も、新メディアをお引き立ていただければ幸いだ。

〈参照〉 ※インドネシアのオンデマンド配車アプリ「Go-Jek」、ユーザ間で電子マネーの相互送金が可能に(The Bridge)